次期健康づくり運動プラン作成と推進に向けた研究

研究班紹介

研究組織

目的

本研究班の目的は、健康日本21(第三次)の策定・実施・評価を学術的観点からサポートすることである。具体的には、以下の5点を目的とする。

(1) 国民の健康課題の要因・健康増進施策などに関する科学的エビデンスを収集・精査して健康日本21(第三次)の策定に活用すること。
(2) 健康日本21(第三次)の目標項目・目標値を提案すること。
(3) 目標達成に向けて自治体などが取組むべき健康増進施策(アクションプラン)を示すこと。
(4) 上記施策の効果的な実施・展開方法を提案すること。
(5) 健康日本21(第三次)の推進及び評価の体制について提案すること。

以上の研究を通じて、健康日本21(第三次)の策定と推進を学術面からサポートし、国民における健康寿命のさらなる延伸と健康格差の縮小に貢献する。

年次毎の研究成果・目標

令和4年度

  1. 次期プラン(健康日本21(第三次))で掲げるべき目標項目と目標値を提案するために、さまざまなエビデンスを精査し、ロジックモデルを検討した。これをもとに、56項目の目標を提案した。
  2. 健康寿命の算定方法に関する検討を行い、現行の算定方法が頑健であることを確認した。次期プランの健康寿命の延伸目標と「健康寿命延伸プラン」の延伸目標との整合性を確認した。健康寿命の地域(都道府県・市町村)間格差の要因分析を行うための資料・ツール類を作成した。
  3. 心理的苦痛による健康寿命の損失は、個人レベルでは重度ほど大きい。しかし該当者数は重度ほど少ないため、集団レベルでの健康寿命損失の約7割が低中程度の心理的苦痛によるものであった。メンタルヘルス対策におけるポピュレーションアプローチの重要性を示した。
  4. 社会経済要因・社会参加・社会環境とさまざまな健康関連事象(死亡までの自立度の変化パターン、がん検診受診、歯肉出血・歯科受診、フレイルリスク、自殺率など)との関連を分析し、社会経済要因による健康格差の縮小策や自然に健康になれる環境づくりを提案した。

令和5年度

  1. 健康日本21(第三次)における「生活習慣の改善」「がん・糖尿病の発症予防・重症化予防」「社会とのつながり・こころの健康の維持及び向上」に関する目標30項目について、目標達成に向けて自治体などが取組むべき健康増進施策(アクションプラン)を提案した。
  2. 健康寿命の都道府県格差の推移を評価するための様々な指標を比較し、健康日本21(第三次)の目標「上位4分の1の都道府県の平均の増加分を上回る下位4分の1の都道府県の平均の増加」という指標の妥当性を確認した。
  3. 健康寿命の社会的決定要因として、独居者で健康寿命が短いことや世帯構造の変化は健康寿命にも影響を及ぼすことが明らかになった。教育歴の低い者ほど健康寿命は短かったが、その格差は社会参加により縮小する可能性を示した。
  4. 共食の機会が多いほどその後の幸福感が高まること、居住地域のジェンダー規範が保守的だと感じる者では男女ともにメンタルヘルス悪化のリスクが高いこと、学歴・所得の格差より資産・年金の格差の方が高齢者の歯科受診の格差と強く関連したことなどを解明し、健康日本21(第三次)が目指す健康格差の縮小・こころの健康の維持向上に係るエビデンスを示した。

令和6年度

本研究事業の最終年度である令和6年度の目標は、自治体がPDCAサイクルを回して健康づくり関連事業の進捗評価を行い、事業を推進できるように支援することである。
そのため、第1に健康日本21(第三次)の推進及び評価の体制について提案し、第2に健康日本21(第三次)の円滑な実施に向けた研修会を開催する。
第1項については、健康日本21(第三次)の各目標について、ロジックモデルにおけるアウトプット指標と中間アウトカム指標を提案する。
第2項については、ロジックモデル〜アクションプラン〜評価・推進について、自治体関係者などを対象とするウェブ研修会を、10月から12月にかけて月1回ずつ開催する予定である。